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飛行機が飛ぶしくみ — 揚力とよくある誤解

重い飛行機を空中に支える揚力がどこから生まれるのか、教科書にも載っていた「同時到着説」がなぜ間違いなのかをまとめました。

📚 暮らしの中の科学 · 10/10· ⏱ 読了目安 3分 ·情報更新 2026-10-05

📋 基本情報

四つの力
揚力・重さ・推力・抗力
揚力のもと
翼が空気を下向きに曲げ、翼の上下に圧力の差が生まれる
よくある誤解
上下の空気が翼の後ろ端で同時に出会うという説明は誤り
速さと揚力
ほかの条件が同じなら、速さが2倍で揚力は約4倍
失速
迎え角が限界を超えると流れがはがれ、揚力が急に落ちる

飛行機にはたらく四つの力

空を飛ぶ飛行機には四つの力がはたらいています。上へ支える揚力と下へ引く重さ、前へ押す推力と後ろへ引っぱる抗力です。エンジンがつくるのは推力で、飛行機を直接持ち上げているわけではありません。エンジンが飛行機を前へ押すと翼が空気を切って進み、その動きが揚力に変わります。同じ高さを同じ速さで飛んでいるときは、揚力と重さ、推力と抗力がそれぞれつり合っています。つまり飛行機が飛ぶしくみを問うことは、翼がどうやって揚力をつくるのかを問うことなのです。

広く知られた「同時到着説」

よく聞く説明はこうです。翼の上面はふくらんでいて下面より長く、前で分かれた空気は後ろ端で同時にまた出会わなければならないので、上面の空気のほうが速く流れ、速い空気は圧力が低いので翼が持ち上がる、というものです。もっともらしく聞こえますが、これは間違いです。分かれた空気が後ろ端で同時に出会わなければならない物理的な理由はまったくありません。風洞で煙を流してみると、上面の空気は下面の空気よりずっと早く後ろ端に着きます。しかもこの説明どおりに速さの差を計算すると、旅客機を浮かせるにはとても足りない揚力しか出てきません。

誤解をくずす証拠

同時到着説が間違っていることは、身近な例でも確かめられます。この説明が正しいなら、上面が長くない翼は揚力をつくれないはずですが、実際にはそうなりません。翼のふくらんだ形は揚力を効率よくつくる助けになる工夫であって、揚力に欠かせない条件ではないのです。

  • 上下が同じ形の対称な翼でも揚力が生まれる
  • 曲技飛行機はさかさまのまま水平に飛べる
  • 翼が平らな紙飛行機もよく飛ぶ
  • 風洞実験では上面の空気が先に後ろ端に着く

本当に起きていること — 空気を下へ曲げる

翼は前側が少し上がった角度で空気を受け、この角度と翼の形のために、翼を通り過ぎた空気は下向きに曲げられて流れていきます。翼が空気を下へ押しやると、作用と反作用によって空気は翼を上へ押し返します。同じことを圧力で見ると、曲がった流れのせいで翼の上面にはまわりより圧力の低い領域が、下面には圧力がやや高い領域ができます。この圧力の差が翼の面積全体にわたって足し合わされたものが揚力です。上面の空気が速くなるのは、圧力が下がった結果として一緒に現れる現象です。

ベルヌーイかニュートンかは的外れな問い

揚力はベルヌーイの定理で説明すべきか、ニュートンの運動の法則で説明すべきかという議論をよく見かけます。しかし二つは競い合う説明ではありません。空気を下へ曲げることと、翼の上下に圧力の差ができることは、同じ現象を二つの方向から見たもので、きちんと計算すれば同じ答えになります。ベルヌーイの定理そのものも正しく、流れの中で速さが大きいところは圧力が低くなります。間違っているのは、上面の空気が速くなる理由を「同時に出会わなければならないから」とこしらえた部分です。速さと圧力の分布を決めるのは、翼の形と空気を受ける角度です。

迎え角と失速

翼が向かってくる空気となす角度を迎え角といいます。迎え角を大きくすると空気をより多く下へ曲げて揚力が増えますが、限界があります。ある角度を超えると、上面に沿って流れていた空気が翼の表面からはがれて渦を巻き、揚力が急に減ります。これが失速です。失速はエンジンが止まることとは関係がなく、翼と空気のなす角度の問題です。そのためパイロットは速度が落ちるほど迎え角が大きくなることに常に注意し、飛行機には失速が近づくと警告する装置が備わっています。

揚力を左右するもの

揚力の大きさはいくつかの要素で決まります。なかでも速さは二乗で効いてくるので、ほかの条件が同じなら速さが2倍になると揚力は約4倍になります。そのため暑い日や標高の高い空港では空気が薄く、同じ揚力を得るのにより速い速度が必要になり、離陸に必要な距離が長くなります。飛行機ができるだけ向かい風を受けて離着陸するのも、地面に対する速さを抑えながら、空気に対する速さを確保するためです。

  • 空気の密度:空気が薄いほど揚力は小さくなる
  • 速さ:空気に対する速さの二乗に比例する
  • 翼の面積:広いほど揚力が大きくなる
  • 翼の形と迎え角:同じ速さでどれだけ効率よく空気を曲げられるかを決める

離着陸のときに翼の形が変わる理由

離陸と着陸のときは速度が遅く、巡航中の翼のままでは揚力が足りません。そこで翼の後ろのフラップと前のスラットを広げ、翼をより大きく反らせて面積も広げます。窓側の席から、離着陸のときに翼の後ろ側が長く伸びて下へ折れ曲がる様子が見えることがありますが、それがこの装置です。高く上がって速く飛ぶときは、抗力を減らすためにまたしまいます。旅客機が巡航する高度約10キロメートルの空気は密度が海面の3分の1ほどしかありませんが、速い速度でそれを補い、薄い空気のおかげで抗力も減って燃料を節約できます。まとめると、飛行機は翼で空気を下へ曲げ、その反作用で浮いているのであり、同時到着説は忘れてかまいません。

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